元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

 足がすくんでしまって動けない私の代わりにアンナが中庭に駆けて行って校舎を見上げた。
 しかしそれらしき人物は居なかったようですぐに悔しそうな顔で戻ってきた。そして。

「レティ!? 足、血が出てるわ!」
「え?」

 そんな悲鳴に見下ろせば、確かにふくらはぎに小さな傷が出来ていてそこから血が滲んでいた。
 きっとガラス片が飛び散ったときに切れたのだろう。
 途端、紙で切ったようなピリピリとした痛みが出てきて――。

「アンナ、あの子ね、寮生じゃなかったの。だから……」

 ドクドクと煩い心臓に手をやりながらなんとかそのことを報告すると、アンナは私を安心させるように優しく抱きしめてくれた。

「レティ、やっぱり先生に言ってなんとかしてもらいましょう。これ、私たちだけじゃ無理そうだわ。でも今はまずは医務室に行きましょう!」

 私はまだ呆然としながら、頷くことしか出来なかった。


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