元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
第十九話
「悪かった!」
「!?」
アンナとふたり医務室を出た途端、廊下に立っていたラウルに勢いよく頭を下げられ驚く。
「俺の、せいで……」
先ほどの騒ぎを知って来てくれたのだろう。
酷く落ち込んだ様子の彼に私は慌てて言う。
「違うの!」
「え?」
「例の子じゃなかったのよ」
アンナがそう後を続けてくれた。
ラウルがゆっくりと顔を上げる。
「そうなのか?」
「うん」
「……そ、それで、傷は大丈夫なのか?」
そう言って、彼は包帯が巻かれた私の足に視線を移した。
「全然大丈夫。ちょっと切れただけだから」
「そ、そうか」
ホッとした様子のラウルにお礼を言う。
「心配してくれてありがとう、ラウル」
「い、いや。……例の力で治すことは出来ないのか? 俺のときみたいにさ」
声を潜めラウルがそう続けて、私は首を振った。
「自分には使えないの」
「え?」
「そうなの?」
アンナも意外そうな顔をした。