元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
「様……姫様……」
「クラウス?」
またいつもの夢。
――いや、いつもとは少し違う……?
何もない空間に、私はひとり立っていた。
私を……セラスティアを呼ぶ声だけが響いていて、言いようのない不安に胸を押さえる。
「姫様」
と、目の前にいつも夢に出てくる長剣を携えた彼が現れた。
「クラウス」
綺麗な金色の髪。でもその碧い瞳が今日は少し憂いを帯びている気がする。
彼が私を見つめ口を開いた。
「姫様に、危険が近づいています」
「どういうこと?」
「どうか、お気をつけて……」
そうして、恭しく頭を下げたまま遠のいていってしまうクラウス。
私は慌てて手を伸ばす。
「クラウス! 待って、クラウス!」
しかしクラウスはそのまま霧の中に消えるようにして見えなくなってしまった。
「クラウス……」
再びひとりぼっちになって項垂れていると、自分の服装がセラスティアのものではなくレティシアのものだと気づく。
――やっぱり、いつもの夢とは違う。
そのときふと気配を感じて顔を上げると、先ほどクラウスがいた場所に今度は銀髪に眼鏡の彼が立っていた。
「ユリウス先生!」
「……」
しかしユリウス先生は何も喋らず、ただこちらをじっと見つめるだけだ。