元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
第二十一話
「本当に来るかな……?」
「絶対に来るわ」
隣で一緒に身を潜めているアンナが確信に満ちた声で言った。
夕飯後いつもなら寮の部屋に帰っている時間、私とアンナは学園の正門近くのベンチ(先日ラウルと噂になってしまったあのベンチだ)に座るユリウス先生を向かいの植え込みの陰からじっと見守っていた。
昼間は生徒たちが多く行き交うこの場所も、この時間は小さく虫の鳴き声が聞こえるだけでとても静かだ。
――あの後、私たちはイザベラが見たというその人物をすぐにユリウス先生に伝えに戻った。
先生はその名を聞いてもさほど驚かず、自分が事実を確認するから部屋で大人しくしているようにと私たちに念を押した。
先生に任せるのが賢明だったのかもしれない。でもどうしても自分の目で真実を確かめたかった私はその場に一緒に居させて欲しいと頼み込んだ。
最初は全く聞き入れてもらえなかったけれど、アンナの「被害者であるレティには知る権利があると思います」という言葉で、遠目からならと先生は渋々了承してくれた。