元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
第三章 隣国からの留学生
第二十三話
むかしむかし、とある王国に『聖女』と呼ばれるお姫様がいました。
お姫様には生まれながらに特別な使命がありました。
王国の繁栄と安寧のため、18度目の誕生祭の日にその命を神に捧げなければなりません。
そんなお姫様には、秘かに想いを寄せる相手がいました。
それは――
「隣国の皇太子であるこの私、ルシアンだった」
「ちょ、ちょっと待ってください」
「なのに、君はあの憎っくき騎士の手によって殺されてしまった……。しかし! こうして生まれ変わり運命の再会を遂げた今! 私たちは今度こそ愛し合うべきなんだよ姫!」
「と、とりあえず少し声を抑えてください。リュシアン様」
ランチタイム。
生徒たちが大勢集うカフェテリアで熱弁を振るう彼に私は引きつった笑顔で言った。
隣に座るアンナは黙々と食事をとりつつ先ほどから私の目の前に座る彼を睨むように見つめている。
当然だ。つい先日世間を騒がせていた誘拐犯であり、ラウルを傷つけた張本人が何もなかったかのように再び目の前に現れたのだ。
しかも『留学生』として。