元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
「ご、ごめん。うるさかった?」
「大丈夫よ。夢にまで出てくるなんてよっぽどね」

 さすがに恥ずかしくて苦笑していると、アンナの視線が私の胸元で留まった。

「レティ、そこ赤くなってるけど虫にでも刺された?」
「え?」

 見下ろすと、確かに鎖骨のすぐ下あたりが赤くなっていた。
 摩ってみるが腫れてはいない。痒みや痛みもない。
 気になって洗面台へ行き鏡に映して見て、ぎくりとする。

(まるで、薔薇のような――)

 “これ”には、すごく見覚えがあった。


  ⚔⚔⚔


「先生! これ見てください!」
「は?」

 朝一でユリウス先生の部屋に入った私は挨拶もそこそこに書物にまみれた机へと駆け寄った。
 そして制服の襟元を大きく開けてみせると先生はぎょっとした顔をした。

「なっ、何をしているのですか!?」

 慌てた様子で顔を逸らした先生に私は更に詰め寄る。

「いいから見てください!」
「ミス・クローチェ! 自分が何をしているのかわかっているのですか!?」
「薔薇の痣が! 急に出てきたんです!」
「え……?」

 ユリウス先生はゆっくりと私の胸元へと視線をやり、そのアメシスト色の瞳を大きくした。

「この薔薇の痣は『聖女』の証なんです!」

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