元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
「まぁまぁ、明日は休みだし部屋でゆっくりしましょ?」
「うん……」
「あー、でも問題はランチね。カフェテリアに行くとリュシアン様に会いそうだし」
「あ~~」
「じゃあいっそのこと朝から出かけちゃう? 街で買い物して美味しいもの食べて息抜きしましょ!」
「賛成~!」
私はアンナの方を向いて笑顔で手を挙げた。
「決まりね! そうと決まれば早く寝ちゃいましょう!」
「うん!」
そういえば買い物に街へ出るのも久しぶりだ。
新しい服を買おうか、それともまた新しい髪飾りでも買おうか。
急に明日が楽しみになってきた。
そうして私たちはおやすみを言って眠りについたのだった。
――なのに。
「おはよう姫。いい朝だね!」
「な、なんで……」
アンナと二人寮を出たところで私服姿のリュシアン様に笑顔で挨拶されて、思わずそんな掠れた声が出てしまった。
隣のアンナも唖然とした顔だ。
「私服姿も素敵だよ。街へ出るんだね。丁度良かった、私も今日は街を散策しようと思っていたんだ。案内を頼めるかい?」
そう首を傾げた彼のすぐ後ろには相変わらずにこりともしないマルセルさんが静かに立っていて、私は昨夜考えていた楽しみがガラガラと崩れ落ちていくのを感じていた。