元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
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「私、酷くない?」

 夕刻、寮の自室に戻った私は開口一番そうぼやいて机に突っ伏した。

「酷くない酷くない」

 アンナがクローゼットの鏡の前でアクセサリーを外しながら軽い調子で否定してくれる。

「忘れられてショックなのは、自分が一番わかってるはずなのに……」

 ユリウス先生がセラスティアのことを憶えていなくて、3日寝込んだことを思い出す。

「本人も仕方ないって言っていたし。でも長年の、前世からの謎が解けて良かったじゃない」
「そうだけど……」
「理由を知って絆されちゃった?」
「それはない、けど」

 即答するとアンナは笑った。

「折角の玉の輿なのに。まぁ、いくら小さい頃に助けてもらったからって、彼の行動は行き過ぎだものね」
「……でも、これまでの自分の態度を思い返すと、ほんと申し訳なくて」

 セラスティアだった頃も含めて、彼には随分冷たい態度をとってきたように思う。
 アンナがよいしょとベッドに腰を下ろして首を傾げた。

「うーん、でもだからって急に態度を変えるのもねぇ。どちらにしても気持ちには応えられないんだから、今まで通りでいいんじゃないかしら」
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