元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

 ……そうだ。
 好かれたきっかけはわかったけれど、だからと言って私の気持ちは変わらない。
 リュシアン様を……ユリウス先生以外の人を好きになることはない。

「それより、気になることを言ってたわね。クラウスさんのこと」
「うん」

 アンナの声音が真剣なものに変わって、私は上体を起こした。

「前世であのふたりが話してたって、レティ知ってたの?」
「ううん。全然、知らなかった……」

 おそらくはセラスティアもだ。
 するとアンナは少し言いにくそうに続けた。

「あれを聞いたら、リュシアン様がクラウスさんのことを憎む気持ちもわかるなって……。勿論、クラウスさんは立場上そう言うしかなかったのかもしれないけど」
「うん……」

 私も今日リュシアン様の話を聞いて、彼の……ルシアン様の印象は随分と変わった。

「だから私もね、ほんのちょっとだけ、レティの誕生日が怖くなってきちゃった」
「え?」

 アンナが私を見つめ、申し訳なさそうに言う。
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