元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
「初めてレティから前世の話を聞いたときは、なんて運命的な再会だろうって思ったけど、ユリウス先生がもし前世を憶えていたとして、じゃあなんで今、18歳の誕生日を迎える年にレティの前に現れたんだろうって。……しかも、憶えていないふりをして」
――レティに知られたくない、何か理由があるんじゃないかって。
――きっと、何か企んでいるに違いないんだ。
少し前にアンナが言った言葉。そして昼間のリュシアン様の声が蘇る。
どくどくと心臓が嫌な音を立てていた。
「ユリウス先生を疑いたくはないけれど、もしかしたらこのまま誕生日まで先生には会わない方がいいのかもって」
「それは……っ」
私が声を上げると、アンナは慌てたように言った。
「そうよね! レティは先生に誕生日を祝って欲しいんだものね。ごめんなさい、私リュシアン様に引きずられ過ぎ」
「ううん。ありがとう、アンナ」
私は笑顔で首を振る。
アンナは私のことを心配してくれているのだ。
(でも、私はやっぱり……)
ぎゅうと机の下で手を握って、私はユリウス先生の顔を思い浮かべていた。
――私の18歳の誕生日が、3日後に迫っていた。