元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
「――そっか、ミレーナ先生が急に辞めちゃったから」
「え?」
教室へ向かう途中アンナがそう声を上げた。
「ほら、同じ歴史の先生だし、ミレーナ先生の仕事もユリウス先生に回って来ちゃってるんじゃない?」
「!」
――そうだ。きっとそうに違いない。
先ほどの酷いくま。ひょっとしたらこの数日全然眠れていないのかもしれない。
ミレーナ先生が辞めたことで、まさかユリウス先生にその負担が掛かるなんて考えもしなかった。
「先生大丈夫かな。っていうか私、本当に先生に迷惑かけてばっかり……」
ミレーナ先生のことも、リュシアン様のことも、結局は全部私のせいで……罪悪感でいっぱいになる。
「あ~、でも全然違うかもしれないし、あんまり気にしちゃダメよレティ!」
アンナが焦るように言ってくれるけれど、返事が出来なかった。