元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
⚔⚔⚔
「姫様、逃げましょう」
「え?」
聞き覚えのある声にぱっと目を開けると、そこにはあのクラウスがいた。
――瞬間、いつもの夢なのだと理解する。
でも、彼は今まで見たこともない怖い顔をしていて、なんだか胸がざわついた。
「逃げるって……?」
セラスティアは……私は、硬い台座からゆっくりと身体を起こした。
天井近くのステンドグラスの窓から柔らかな光が射していて、クラウスの金の髪が幻想的に輝いて見えた。
そして気が付く。この場所は、聖女が命を捧げる特別な聖堂の中だ。
私は今、驚くほど穏やかな気持ちでそのときを待っていたのだ。なのに……。
「手はずは整っています。今すぐこの国を出るのです」
「クラウス、何を言っているの?」
再度問う。私の薔薇を貫きにやって来たはずのこの騎士は、一体何を言っているのだろう。
彼は冗談を言うような人ではない。しかもこのような大事な場面で。それがわかっているからこそ、私は激しく戸惑っていた。
クラウスは手にしていた聖剣を静かに腰に収めると、私の前で恭しく片膝を着き深く頭を垂れた。
「お願いです姫様。私と共に逃げてください」
そうして彼はやはり見たこともない沈痛な面持ちで私に言ったのだ。
「私にはやはり、姫様を手に掛けることなど出来ません」
「姫様、逃げましょう」
「え?」
聞き覚えのある声にぱっと目を開けると、そこにはあのクラウスがいた。
――瞬間、いつもの夢なのだと理解する。
でも、彼は今まで見たこともない怖い顔をしていて、なんだか胸がざわついた。
「逃げるって……?」
セラスティアは……私は、硬い台座からゆっくりと身体を起こした。
天井近くのステンドグラスの窓から柔らかな光が射していて、クラウスの金の髪が幻想的に輝いて見えた。
そして気が付く。この場所は、聖女が命を捧げる特別な聖堂の中だ。
私は今、驚くほど穏やかな気持ちでそのときを待っていたのだ。なのに……。
「手はずは整っています。今すぐこの国を出るのです」
「クラウス、何を言っているの?」
再度問う。私の薔薇を貫きにやって来たはずのこの騎士は、一体何を言っているのだろう。
彼は冗談を言うような人ではない。しかもこのような大事な場面で。それがわかっているからこそ、私は激しく戸惑っていた。
クラウスは手にしていた聖剣を静かに腰に収めると、私の前で恭しく片膝を着き深く頭を垂れた。
「お願いです姫様。私と共に逃げてください」
そうして彼はやはり見たこともない沈痛な面持ちで私に言ったのだ。
「私にはやはり、姫様を手に掛けることなど出来ません」