元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
「――レティ?」
「!?」
はっとして目を開けると、そこにはレティシアの友人である赤毛の少女がいた。
――夢から、前世の記憶から醒めたのだ。
これは現実。私はセラスティアではなくレティ。――レティシア・クローチェだ。
そして私を心配そうに見つめる彼女の名は。
「……アンナ」
「具合はどう? 少しは楽になった?」
休み時間に様子を見に来てくれたらしいアンナが首を傾げて、私はベッドからゆっくりと身体を起こした。
「アンナ」
「ん?」
「セラスティアは、クラウスに殺されたわけじゃないかもしれない」
「……え!?」
たっぷり一拍置いてアンナが声を上げた。
「どういうこと? だって」
「調子はどう? レティシアさん」
そのときソニア先生がカーテンから顔を覗かせて、私たちは慌てて口を噤んだ。
「あ、大分楽になりました。薬が効いたみたいです」
お腹を摩りながら言うとソニア先生は穏やかに笑った。
「そう、それは良かったわ」
「はい。もう大丈夫そうなので次の授業は出ようと思います」