元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
第三十話
「姫!」
教室に戻ると、つまらなそうに席についていたリュシアン様の顔が私を見つけてぱっと明るくなった。
「なんか、ちょっと可愛いかも」
「え」
ぼそっと隣でアンナが呟くのが聞こえてびっくりする。
(かわいい……?)
「心配したよ。もう具合はいいのかい?」
満面の笑みでこちらに駆け寄ってきた彼に私は少し気圧されながらも答える。
「は、はい、ありがとうございます。あの、リュシアン様に少しお訊きしたいことがあるのですが。……その、前世のことで」
「うん? なんだい」
そのまま続けようとして、しかしクラスの皆の視線が気になった。その中には勿論ラウルやイザベラの目もあって。
早く訊きたいけれど、今ここでする話ではないかもしれない。それに次の授業がもう始まってしまう。
「ええと、すみません、やっぱりランチタイムにお話します」