元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
目の前が赤に染まって、私の意識は急浮上した。
ゆっくりと目を開けると淡くオレンジ色に染まった天井と白いカーテンが見えて、また医務室だとわかった。
と、誰かが私を覗き込んだ。
「レティ? 大丈夫?」
「……アンナ」
「レティ、さっき突然倒れたのよ。覚えてる?」
(そうか、さっきクラウスの話を聞いて――)
頷くと、アンナは気遣うように小さな声で続けた。
「ショックよね、あんなの聞いちゃったら……。今午後の授業が終わったから様子を見に来たの。目が覚めて良かったわ」
「……今ね、また前世の夢を見ていたの」
「え?」
夢の内容を話すと、アンナは口元を手で覆い涙声で言った。
「セラスティア姫、可哀想……」
……あの後、セラスティアはどうしたのだろう。
でも大体想像がついた。
セラスティアが受け入れるはずがない。だからきっと――。
「レティシアさん、目が覚めた?」
そのときカーテンを開けて入ってきたのはソニア先生だった。
先生は少し怒ったような呆れたような顔をしていて。
「だから無理しちゃダメって言ったでしょう。痛みはどう?」
「すみません、もう大丈夫みたいです」
起き上がりながら答える。
随分長いこと眠っていたからか、胃の痛みはすっかりなくなっていた。
「本当に?」
「は、はい」
疑わし気な目つきでもう一度訊かれて私はこくこくと頷く。
すると先生はひとつ息を吐いてから優しく言った。
「なら、今日はもう寮に戻って早く休みなさい。もう無理はしちゃだめよ」
「はい!」