元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
先生にお礼を言って、私はアンナと一緒に医務室を出た。
途端のことだ。
「レティ!」
「レティシア!」
ラウルとリュシアン様から同時に声を掛けられてびっくりする。
廊下でずっと待っていてくれたのだろうか。マルセルさんも一緒だ。
「もう歩いて平気なのかい?」
「もう大丈夫なのかよ」
これもまた同時に訊かれて、私は精一杯の笑顔を作る。
「ありがとう、ございます。もう大丈夫です。すみません、何度もご心配をお掛けして」
「はいはい、レティはこのまま寮に戻って休ませるから、話はまた明日ね」
アンナがそう続けてくれた。
ふたりはまだ何か言いたそうな顔をしていたけれど、私はもう一度すみませんと謝罪してふたりの前を通り過ぎようとした。――と。
「レティ!」
「え?」
振り返るとラウルが怒っていた。いや、酷く強張った顔をしていた。
それを見て、そういえば放課後に大事な話があると言われていたことを思い出す。
明日でも大丈夫かと訊こうとして、それよりも早く、彼は真っ赤に染まった顔で告げた。
「俺、もう他は見ないから。一生お前だけを愛すから。だから、この学園を卒業したら、この俺と結婚して欲しい」