元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

「私が軽く考えすぎていたのかな」

 そういえば、いつかそんなことをユリウス先生に言われたことを思い出す。
 イザベラだってそうだ。ユリウス先生の話をするまで彼女は何度違うと言っても私のことをラウルの許嫁として見ていた。
 私だけが、軽く考えていたのだろうか。……だとしたら。

「ラウルに申し訳ないことしちゃった?」
「え?」

 顔を上げると、彼女はいつかのように呆れた顔をしていて。

「ほらやっぱり。そう考えてるって顔してたもの」
「あ……」

 アンナが向かいのベッドに腰掛けて怒ったように言う。

「これに関しては全部ラウルがいけないのよ。これまでのあいつの言動見てたら誰だって今更何? ってなるわよ。レティが悪く思うことは全くないわ」
「……」
「……でも、」

 そこでアンナは困ったような、でも優しい顔をして続けた。

「タイミングはほんと最悪だけど、あいつもやっと本気になったみたいだし、レティもこの機会にラウルのこと本気で考えてみるのもありかも?」
「え?」

 私は目を見開く。

「前世のことは勿論気になると思うけど、でも今はレティなんだから。私はレティ自身に幸せになって欲しい」

 そうして私の一番の親友は綺麗に微笑んだ。

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