元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

  ⚔⚔⚔


 その夜もなかなか寝付けなかった。
 昼間医務室でたくさん寝てしまったからかもしれないけれど。
 また、あの夢の続きを見てしまいそうで眠るのが怖かった。
 どう考えてもあの後、セラスティアの最期は幸せなものではなかっただろう。
 これ以上、真実を知るのが怖かった。

 ――それに。

(ラウルと、結婚……?)

 ラウルのことは勿論嫌いではない。幼い頃から近くで見てきて、きっとお互い良いところも悪いところもわかっていて、あまり社交的とは言えない私にとっては気兼ねなく接することの出来る数少ない大切な存在。
 この間だって彼は私のせいで大変な目に遭って、彼がいなくなると思ったら恐ろしくてたまらなかった。聖女の力で彼が助かって、涙が出るほど嬉しかった。
 でもそれは、彼がアンナと同じ大切な幼馴染で友人だから……。
 今日彼のあの言葉を聞いても、驚きと困惑ばかりで胸が高鳴ったり嬉しいという感情は湧いてこなかった。
< 188 / 260 >

この作品をシェア

pagetop