元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
「私は、セラスティアの想いをクラウスに届けたくて」
――クラウスの生まれ変わりであるユリウス先生に、その切な想いを伝えたくて……。
薔薇の痣のある場所を強く握りしめていると、先生がもう一度息を吐いた。
「セラスティアではなく、貴女自身の気持ちをもっとよく考えてみてください、ミス・クローチェ」
初めて聞いたユリウス先生の優しい声音は、まるで子供をなだめるかのようで。
「人生は一度きりなのですから」
その言葉は、私の胸に重くのしかかった。
⚔⚔⚔
人生は一度きり。
セラスティアは……前世での私は、その一度きりの人生を王国のために捧げた。
だから今世では、自分のために、自分の気持ちに正直にいたいと思った。でも。
――私、レティシアの気持ちは……?
「レティ?」
「え?」
アンナが隣から私の顔を覗き込んでいた。
「授業終わったわよ?」
言われて、教室の窓から見える空がいつの間にか夕焼け色に染まっていることに気付く。
思い出したようにクラスメイトたちの話し声が耳に入ってきて。