元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
動揺するアンナの前で、私は自分の胸元を開いて見せた。
アンナが声にならない悲鳴を上げてその口を塞いだ。
――そこには、真紅を通り越してどす黒く変色し肥大した薔薇の痣があった。
今朝、あの夢を見たあとでこれに気付き、もしかしてという疑念は確信に変わったのだ。
――私はまた、……あなたを……なかった。
夢の中で途切れ途切れに聞こえた彼の声。
あれはきっと、前世の私の最期だったのだろう。
『私はまた、あなたを救えなかった』
彼は、あの世界の“先生”は、私にそう言ったのではなかったか。
だとしたら。
「先生はそのことを知っていて、私を助けようとしてくれてるのかもしれない」
⚔⚔⚔
「……レティ? 何してるの?」
しばらく呆然としていたアンナが、先生の机の上や引き出しの中をガサガサと探り始めた私に訊ねた。
「先生が今どこにいるのか知りたくて、何か行き先の手がかりとかメモとか残ってないかなって」
「え?」