元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
「あぁ、そうさ。あのとき私が連れて行かれたのは憲兵隊の詰所だよ」
「!?」
「でもあいつは中にまでは入らなかった。門番に声をかけて、間もなく出てきた憲兵の男に私を引き渡してすぐに去っていったよ。……あいつも気に食わないが、その憲兵の男も相当に無礼な奴だったな」
そのときのことを思い出したのかリュシアン様の目つきが剣呑なものになった。
「リュシアン様が勝手なことをなさるからでしょう」
マルセルさんが溜息交じりに続ける。
「お蔭で事が大きくならずに済んだのですから、本当に良かったですよ」
「煩いぞマルセル」
「……行ってみるか」
「行ってみるって、憲兵隊の詰所に!?」
ラウルの言葉に驚いたのはアンナだ。
「それしかないだろ。その無礼な憲兵の男は間違いなくあいつの知り合いなんだろうからな。あいつの行方について何か知っているかもしれないし、ひょっとしたらあいつ本人がそこにいる可能性だってある」
ごくりと喉が鳴ってしまった。
(ユリウス先生……)
「私、行ってみる」
「レティ……」
アンナは不安そうに私を見てから、ぐっと拳を握った。
「わかったわ。レティが行くなら私も一緒に行く!」
「ありがとう、アンナ」
「よし、そうと決まれば早速だ」
そうして私たちは頷き合い、先生の部屋を出たのだった。