元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
「応援すると約束しましたものね」
口に手を添え小声で言われ私は目を見開く。
「イザベラ……ありがとう」
お礼を言うと彼女は微笑んで私の横に並んだ。
「ふふ、授業をサボるなんて初めての経験ですわ! それで、どこに向かいますの?」
「憲兵隊の詰所だよ」
溜息交じりにラウルが答えると、イザベラは途端ぎょっとした顔をした。
「憲兵隊!? あの方何か捕まるようなことしたんですの!?」
「声がでけえよ!」
ラウルが大きな声でつっこみ、イザベラは慌てたように両手で口を塞いでいた。
……そして、一抹の不安を覚えながらも私たちは学園を出た。
憲兵隊の詰所はつい先日もアンナや王子たちと行った中央広場のすぐそばにある。
学園からは徒歩で10分くらいの距離だ。
イザベラには、先生の行方が知りたくて手がかりを捜していたら机の中にこれがあったのだと憲兵の金バッジを見せた。
するとイザベラは目を丸くして「レティシアさん、あなた意外と大胆ですのね」と驚かれてしまった。
――流石に、彼女に前世の話は出来なかった。