元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
第四話
「なに、それ」
――ユリウス先生が、連続誘拐事件の犯人……?
冗談にしても笑えなくて、口元が引きつっているのが自分でわかった。
ラウルが似合わない真剣な表情で続ける。
「アイツ、あの見た目と名前からしてこの国の出身じゃないだろ。実は人身売買が目的でこの国に潜り込んだんじゃないかって。事件の話を聞くようになったのもアイツがこの学園に来てからだしな」
「そんなのただの憶測じゃない! 昔じゃあるまいし、他の国から働きに来ている人なんて今時いくらでもいるわ」
「それにあの人を見下したような目つき。人ひとりくらい殺してそうだってな」
「ユリウス先生はそんな人じゃないわ!」
知らず声が大きくなってしまっていた。
「ユリウス先生のこと、何にも知らないくせに!」
するとラウルの眉がぴくりと跳ねた。
「なら、お前はアイツの何を知ってんだよ」
「……っ!」
言葉に詰まる。
……悔しいけれど言い返せなかった。