元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
――12年前、この国はとある戦争に巻き込まれた。
幸い市街地にまでは被害は及ばなかったけれど、当時まだ幼かった私もそのときの不安はなんとなく憶えている。
「今この国が平和なのは、彼のお蔭みたいなものよ」
「わたくしも聞いたことがありますわ」
イザベラも私を挟んで小声で話に入ってきた。
「なんでも、ひとりで敵部隊をほぼ殲滅させたとか」
「へぇ……」
そんなに凄い人なんだ。そう思った時だ。
「あぁ。アレ、大分脚色されてるから」
「へ!?」
「ふぁ!?」
急にローレン大佐本人から返答があってアンナとイザベラが素っ頓狂な声を上げた。
しっかり聞こえていたみたいだ。
私たちの反応を面白がるように笑いながらローレン大佐が続ける。
「あれ、実はほぼユリウスの奴の功績だったりするんだよな~」
「え!?」
今度素っ頓狂な声を上げたのは私だ。
「当時あいつは今の君らより若くて、言っても誰も信じねぇし、あいつも全然拘らねぇからなんか全部俺の手柄ってことになっちまってなぁ」
ローレン大佐は当時を懐かしむように遠くを見つめた。