元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
「あとは俺が個人的に調べあげたんだけどな。あいつの守りたい人ってのが君だってことがわかった。――クローチェ公爵家の一人娘、レティシアお嬢様」
私は顔を覆いながら小さく頷く。
今、酷い顔をしている自覚があった。
(先生……ユリウス先生……っ!)
先生への気持ちが溢れてどうしようもなかった。
ローレン大佐が首を傾げる。
「で、そのご令嬢がなぜユリウスの奴を捜してるんです? あいつ何かしでかしたんですか?」
「そ、その、急にどこかへ行ってしまったんですの。その行き先を知りたくて」
私の代わりに答えてくれたのはイザベラだった。
「あいつの行き先?」
「急を要することなんだ。あいつは何かを調べていて、それを見つけて出て行ったようなんだが……何か心当たりはないか?」
リュシアン様がそう訊いてくれる。
「随分とまた曖昧ですねぇ。うーん、あいつが調べていたことねぇ~」
目を擦って顔を上げると、片眉を上げていたローレン大佐が「あぁ」と声を上げて私を見た。
「聖剣」
「聖剣?」
皆の声が重なった。
くくっと笑って彼は続けた。
「あいつねぇ、どこかへ遠征に出るたんびにそこの住人に訊いてたんですよ。ここに聖剣の伝説はないかって。意外に子供っぽいとこあるなぁと微笑ましく思ってたんですけどね。……関係ありそうです?」
(聖剣……!)
私は聖女の薔薇を刺し貫くために在った、あの『聖剣』のことを思い出していた。