元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
ぽかんとした顔のイザベラを見て、なんだか申し訳なくなってくる。
普通こんな話すぐには信じられないだろう。
「ごめん、こんな突拍子もない話信じられないよね。でも――っ」
と、そこで私は言葉を切った。
イザベラが急にハラハラと涙を流し始めたからだ。
皆もぎょっとした顔でそんな彼女を見ている。
「イ、イザベラ……?」
「……わ、わたくし、ずっと、聖女が可哀想で可哀想で……っ」
「え……?」
ついには顔を覆ってイザベラは泣き始めてしまった。
「いつか、聖女が生まれ変わってでも報われて欲しいと……ずっと、そう願っておりましたの……」
「イザベラ……」
釣られてこちらまでまた涙が出そうになる。
まさかイザベラがここまで聖女に同情してくれるとは思わなかった。
小刻みに震える肩に手を触れようとして、急に伸びてきた手にその腕をがっしりと掴まれ驚く。
「!?」
顔を上げたイザベラは涙に濡れた恐ろしい形相をしていて。
「絶対に死なせませんわ」
「え」
「わたくしが、全っ力でレティシアさんとユリウス先生を幸せにしてさしあげますわ!」
その迫力に少し気圧されながらも、私はありがとうとお礼を言ったのだった。