元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

第三十九話


「長く生きた聖女ってのはいないのかよ」

 大盛りパスタを食べ終えたラウルが言った。

 私たちは一先ず中央広場近くのカフェレストランに入り遅い昼食をとっていた。
「リュシアン様も皆さんも、そろそろ何か食べませんか?」という、それまでずっと黙って私たちについて来ていたマルセルさんの言葉で、そういえば朝から何も口にしていないことに気付いたのだ。
 きっと皆私を気遣って言い出せなかったのだろうと思ったら申し訳なくて、すぐさま傍にあったこの店に入った。
 リュシアン様はそんなマルセルさんに最初「空気読め」と怒っていたけれど、やはりお腹が空いていたのだろう、頼んだサンドイッチをすぐに食べきっていた。
 食欲はなかったけれど私もトーストを頼み、イザベラにこれまでの話をしながらゆっくりと口に入れていた。イザベラは涙ぐみながら、そんな私の話を真剣に聞いてくれていた。

「いないと思う」

 ラウルの問いに私は首を振り答える。

「セラスティアがクラウスと逃げているとき、私だけが生きてしまっていいんだろうかって、凄く気にしていたし」
「わたくしがこれまでに読んだ聖女の物語の中にも、残念ながらそういったお話はありませんでしたわ。聖女は18歳で王国のために命を捧げる、そういう運命なんですの」

 イザベラがハンカチで涙を押さえながら続けると、ラウルは小さく舌打ちをし腕を組んだ。
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