元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
ふぅとリュシアン様が息を吐いた。
「私は端からあいつを疑っているからな、聖剣を探していると聞いてもやはりなとしか思わなかったが」
そして彼は私を見つめた。
「だから私のすべきことは何も変わっていない。今度こそ君をあいつから守ってみせる」
「リュシアン様……」
やはり彼は先生を全く信用していないのだと少し悲しくなった。
「つーか、そもそもなんだって今レティに聖女の証なんてものが現れたんだ? その王国が滅んでから何年経ってんだよ」
「それを言うなら、なんでこうして生まれ変わったのかって話になるじゃない。それも、もしかしたら一度じゃないのかもしれないのよ」
「そんなの決まっていますわ」
「あ?」
「え?」
「ふたりが再び巡り会うためですわ!」
イザベラが声高に叫び、一瞬店内がしんと静まり返った。
皆の視線に気付いたイザベラが恥ずかしそうにハンカチで口を隠し、小さく続ける。
「一先ず学園に戻りませんこと? わたくし先生の集めたという書物が気になりますし、先生を探しに行くにしても荷物も何も持ってきませんでしたもの」
「そういえば私も……」
言われて気づく。先生の部屋を出てそのままの勢いでここまで来てしまったからお金も何も持ってきていない。