元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
学園に戻った私たちは先ず門番にユリウス先生が戻らなかったか訊ねてみた。
しかしやはりまだ戻ってきていないようで、私は肩を落とした。
そして私たちは再びこそこそと先生の部屋に忍び込んだ。
心なしか目を輝かせて本棚に飛びついたイザベラは早速一冊の書物を手に取ると上ずった声を上げた。
「これ、わたくしの持っていた本ですわ」
「え!?」
イザベラが慣れた手つきでその古い書物をパラパラと捲っていく。
それは聖女が主人公の恋物語のようだった。
「ほらここに、わたくしのサインがありますでしょ? 一度お母様が私に内緒で何冊か処分してしまったんですの。そのときは悲しくて仕方ありませんでしたけれど、まさかこうしてまた巡り会えるなんて」
イザベラはその書物を大事そうに抱きしめた。
「そういうのはいいからよ、とりあえず聖剣について書かれた本をもう一度調べてみようぜ」
ラウルに溜息交じりに言われイザベラは少し口を尖らせていたけれど、すぐにまた別の本に興味を惹かれたようだった。
「もうこんな時間……」
アンナの視線を追って掛け時計を見ると、もう夕刻近かった。
……私の18歳の誕生日が刻々と迫っていた。