元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

「見ないでください!」

 ――化け物のようになった姿を、二度も好きな人に見せたくはない……!

 片手で顔を隠し這いずるように逃げようとした私の肩を大きな手が掴む。

「や、離して!」
「姫様!!」

 懐かしい呼び名と共に急に目の前が暗くなった。
 瞬間、セラスティアの最期のように視力まで侵されたのかと思った。
 でも、違った……。

「落ち着いてください」

 声がすぐ傍で響いた。
 身体に直に伝わるその響きと温もりで、私は彼に……ユリウス先生に抱きしめられているのだとわかった。
 
「大丈夫。もう大丈夫ですから」

 何が大丈夫なのだろう。
 全然大丈夫じゃないのに。

「大丈夫です」
「……っ」

 でも、繰り返されるその優しい言葉と温もりに安堵して、私は先生の腕の中で子供のようにわんわんと泣きじゃくった。



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