元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
「落ち着きましたか?」
「……はい」
ゆっくりと顔を上げるとユリウス先生がクラウスとは違うぎこちない微笑みを浮かべていた。
「自身の傷は治せないというのに、痕が残ったらどうするのですか」
「え……?」
「レティ!」
「レティシアさん!」
そのとき、そんな大声が聞こえてきて私はハッとする。
先生の向こうに皆の姿があった。アンナとイザベラ、ラウルとリュシアン様たちもいる。
友達にこの醜い姿を見られたくないと焦ったそのとき、ふわりと身体が何かで覆われた。
それは先生の上着だった。驚き見上げると彼は皆の方を向いていて。
「大丈夫です。彼女は僕が必ず助けます」
その確信に満ちた力強い声に、こちらに駆け寄ろうとしていたアンナとイザベラは足を止めた。
「助ける……?」
私がそう小さく呟くと、先生はこちらに向き直り溜交じりに続けた。