元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
「しかし王の言葉通り、もう遅かった。奇跡の代償は呪いとなって、どこまでも貴女に付きまとい、貴女は何度生まれ変わっても18歳の誕生日に命を落とす運命にありました」
「じゃあ、やっぱり今回も……」
また震え出した私の手を、先生は優しく握ってくれた。
「でもやっと、あのときと同じ世界に生まれることが出来たのです」
「え……?」
月明りのせいだろうか、このとき先生の瞳がクラウスと同じ色に見えた。
「僕は……いえ、私はこれまで何度も貴女を救おうとしてきました。しかし、この呪いを解く唯一の術である聖剣はこの世界にしか存在しない。私はこれまで何度も貴女を目の前で失い、何度も絶望してきました……。しかしやっと、こうしてあのときと同じ世界に生まれ、この聖剣を手に出来たのです」
「クラウス……」
思わずその名を口にしていた。
それは確かに、クラウスの言葉に聞こえたから。
彼は私から少し下がると、まるで騎士のように胸に手を当て深く頭を垂れた。
「私は、あのとき貴女を殺めることが出来ませんでした。全ては、私の弱さが招いたこと。しかし今世こそこのクラウス、貴女様を救ってみせます」