元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

第四十三話


「その剣でどうやってレティを救うつもりだよ!」

 飛んできた怒声はラウルのものだった。
 アンナの声がそれに続く。

「そうよ! だって聖剣は聖女を貫くためにあるんでしょう!? レティに何かあったらいくら先生だって、クラウスさんだって許さないんだから!」

 彼は顔を上げ、まっすぐに私を見つめた。

「私を信じてください」

 その言葉に私は頷いていた。
 自分の……レティシアの意思とは関係なく。

「 貴方を信じます 」

 それはおそらく、セラスティアの言葉。

 次の瞬間、私の身体は糸が切れたように倒れ込んだ。
 でもそんな私を彼の腕が優しく支えてくれる。
 そして仰向けに抱えられた私の胸元に、鋭い剣先があてがわれた。

「やめろ!」
「いやあ!!」

 皆の悲鳴を耳にしながら私は静かに目を閉じる。

「呪いは今世で絶ち切ります」

 あの夢と同じ衝撃と共に、瞼の裏に薔薇色の光を見た気がした。

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