元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

「さぁて。いつもしつこく邪魔をしてくる騎士は死にました。あとは今世でも貴女を葬るだけです」
「レティ! 逃げて!!」
「ラウル様!?」

 アンナの絶叫が上がり、ラウルがこちらに向かって駆けてくるのが見えた。
 でも私はその場から動けなかった。

 ――彼が、ユリウス先生が、死んだ?

 目の前の現実が、まだ理解できていなかった。
 信じることが出来なかった。

「……だって先生、私まだ聞いていません。おめでとうって。お誕生日おめでとうって……私聞いてないです」

「聖女セラスティア姫。来世でまたお会いいたしましょう」

 マルセルさんが私に向かって剣を振り上げた。――そのとき。

 パンっ、という乾いた音が辺りに響いた。


< 245 / 260 >

この作品をシェア

pagetop