元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
第四十四話
「――は?」
マルセルさんは目を剥き、己の脚をゆっくりと見下ろす。
そして握っていた長剣を取り落とし、呻き声を上げながらその場にがくりと膝を着いた。
何が起きたのかわからなかった。
わかるのは、焦げたような鼻につく匂いと、先生の手元から立ち昇る白い煙。
「貴方に、もう来世はありません」
私の前でむくりと起き上がったユリウス先生の手には、見たことのない筒状の武器が握られていた。
――いや、知っている。私はその武器に憶えがあった。
「それは……そんな、馬鹿な」
脚を押さえ驚愕している様子のマルセルさんに、先生は立ち上がりながら冷静な声音で答える。
「そう。これは拳銃という異世界の武器です。この世界にも一応銃はありますが、まだここまで小型化はされていません。ひとつ前の前世で気に入りましてね、僕なりに作ってみたのですよ。まぁ、威力はまだ完全ではないですが」
先生は彼にその銃口を向けながら続ける。