元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

 ――瞬間、聖剣が薔薇色に光輝いた。

「ぎゃああああああーーーー!!」

 その場の空気を震わすような恐ろしい断末魔の叫びが夜の森に響き渡る。
 薔薇色の輝きはどんどん強さを増し、それと同時に彼の身体から何か黒い煙のようなものがいくつも抜け出て天へと昇っていくのを見た気がした。



 光が消え失せ、マルセルさんの身体はぴくりとも動かなくなった。
 先生はそれを確認し彼の身体から聖剣を引き抜いた。途端、パキンっと音を立て聖剣は真っ二つに折れてしまった。……これで漸く役目を終えたというように。

 その音でハッと我に返ったらしいリュシアン様はマルセルさんの元へと駆け寄る。

「マルセル……? マルセル!」
「大丈夫です。聖剣が貫いたのは彼に憑いていた【呪い】ですから」

 先生はどこからか布を取り出し、手慣れた様子で拳銃で傷ついた脚を強く縛っていく。

「前世の記憶はおそらく消えていると思いますが。今すぐに病院に連れていけば命に別状はないと思いますよ。――ローレン大佐。手配をお願いできますか?」
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