元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
そして彼は私の元へとやってくる。
「これで本当に全て終わりましたよ」
「え……?」
「もう、聖女の証も消えているはずです」
言われて腕や胸元を確認してみると、あの禍々しい茨の蔓も薔薇の痣も綺麗に消えていた。
でももう一度顔を上げて、先生の服にべっとりと付いた血痕に気付く。
「先生、その傷……!」
「あぁ、これは血のりです。大丈夫、一応中に防護服を着込んでいるので」
「血のり……?」
「――あぁ、そうだ」
彼は思い出したように胸ポケットから懐中時計を取り出すと時間を確認しひとり頷いた。
「良かった、まだ間に合いますね」
先生は懐中時計を仕舞い、私の前に片膝を着いた。
そして、いつもの涼しい顔で言った。
「18歳のお誕生日、おめでとうございます。ミス・クローチェ」
ずっと聞きたかったお祝いの言葉が聞けて嬉しいはずなのに、私は呆然とし過ぎて何の反応も返せなかった。