元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
「昨日お話ししたこと、ちゃんと理解していますか?」
「し、しています!」
でもそれとこれとは話が違う。
先生の昨日の言葉はずっと胸につかえているけれど、今は私の気持ちどころではないのだ。
「朝からこそこそと。はっきり言って目障りなのですが」
「がーーん!」
酷過ぎる物言いに思わずそんな声が出てしまった。涙もちょっとだけ出た。
(というか、朝からバレてた……?)
そうとわかったら急に恥ずかしくなってきて、顔の熱が一気に上がった。
「で、でも、これは先生のためでもあるんです!」
「僕の?」
先生が訝しげに眉を寄せて、しまったと慌てて口を噤む。
「先生、皆から誘拐犯だと疑われています!」 なんて言えるわけがない。
先生だって流石にショックを受けるに決まっている。
「――き、昨日先生に言われて、私自分の気持ちを確かめたくて……。だから、気持ちがはっきりするまでは、目障りかもしれませんが、見つめるのだけは許してください!」
一か八か、必死な思いで頭を下げる。
すると、
「はぁ……もう勝手にしてください」
そう呆れたふうに言って先生はくるりと背を向けた。