元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
――そう。先ほどの話はフィクションではなくノンフィクション、私の前世での実話なのだ。
物心ついた頃から私はこの『聖女』だった頃の夢をよく見ていた。
それが前世の記憶なのだと確信したのは、今学期始めにこの王立ベルトリーニ学園に赴任してきた彼を目にしたときだ。
教壇に立ち自己紹介をする彼を見ながら、私は知らずのうちに涙を流していた。
まさに運命だと思った。
「クラウス!」
彼がひとりになるときを待って背後から前世での名を呼ぶと、彼はぴたりと足を止めた。
だから私は続けて叫んだ。
「私です。セラスティアです! またこうして会えるなんて……!」
「……」
こちらを振り向いた彼は涙をいっぱいに溜めた私を見て、ゆっくりと首を傾げた。
「ひょっとして僕に言ってますか?」
「え……?」