元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

「ずっと君を捜していたんだ。また逢えて嬉しいよ。聖女セラスティア姫」
「!?」

 まず前世での名が出てきたことに驚いて、フードが外され現れた姿を見て私は大きく目を見開いた。
 漆黒の髪に赤い瞳。そして恐ろしいほどに美しく整った顔には見覚えがあった。

「ルシアン様……?」

 掠れた声でその名を呼ぶと、ラウルとアンナが驚いた顔で私を見た。
 “彼”が満足げに目を細める。

「良かった。覚えていてくれたんだね、姫」
「なんで……」

「レティ、知り合いなの? 姫って……?」

 アンナに戸惑うように訊かれて、ハっと我に返る。
 ラウルも私と彼とを交互に見て困惑している様子だ。

「あ、えっと……」

 どう答えるべきか焦っていると、白い手が差し伸べられた。

「さぁ姫、私と共に行こう」
「え?」

 彼がにぃとその口端を上げる。

「今度こそ、私は君を――」
「そこで何をしているんです!?」

 そのとき聞こえてきた声に、酷く安堵する。

(ユリウス先生……!)

 彼が通りの向こうから走ってくるのが見えた。

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