元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

第七話


「間違いないのですか?」

 私は頷く。
 特徴的な赤い瞳も、あのどこか異質な笑顔も、驚くほどに記憶の中の彼と変わらなかった。

 前世の彼、ルシアン様は隣接する大国の皇太子だった。
 私は18歳で命を捧げる運命にあったのに、彼もその事を知っていたはずなのに、その誕生日の直前、突然私の国を訪れ私を……セラスティアを婚約者に欲しいと申し出たのだ。
 セラスティアを含め皆が驚いた。でも結局大国の皇太子である彼の申し出を断ることは出来ず、私は彼の名前だけの婚約者となった。
 しかし運命は変わらず……セラスティア亡き後、彼がどうしたのかは勿論私の知るところではない。

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