元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
「彼は、貴女に何と?」
「ずっと捜していたと、そして共に行こうと……言われました」
思い出して自分の腕を強く握りながら言うと、ユリウス先生の顔が険しくなった。
「件の犯人は、その彼に間違いなさそうですね」
「え?」
「例の事件の被害者ですが、幸いにも皆すぐに戻って来ているようです。いえ、帰されている、と言った方が正しいかもしれません」
「帰されている?」
妙な言い方に首を傾げると、先生は不快そうに続けた。
「犯人はとても美しい男で、声を掛けられた女性は自分からついて行き、しかし皆『お前ではない』と追い払われたらしいのです。そういうわけで隠したがる女性も多く、あまり公にはなっていないようですが……」
と、そこで先生が真っ直ぐに私を見つめた。