元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
「おそらく、彼の本当の狙いはミス・クローチェ、貴女です」
そう冷静な声で言われて、改めてぞくりと鳥肌が立った。
「……なんでレティなの」
「アンナ?」
小さく呟いたアンナの方を見る。
アンナは俯いたまま震える声で言った。
「だって、それは前世の話なんでしょう? 今のレティに何の用があるの?」
「確かに。心当たりはないのですか?」
ユリウス先生が後を続けた。
私は首を振る。
「全く……わかりません」
前世でも、ルシアン様がなぜ私を婚約者に望んだのか結局わからなかった。
今の私に奇跡の力はないし、確かに聖女の証は現れたけれど、今の私に出来ることなんて何もないはずなのに……。