元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

 アンナが硬い声で言う。

「レティを守らなきゃ」
「アンナ……」
「だってあの人、また迎えに行くって言ってたわ。また来るつもりよ。ねぇラウル、あなたレティの許婚でしょう? レティを」
「俺は信じねえ」
「え?」

 低く呟いたラウルを見つめる。
 彼はゆっくりと顔を上げ、私を睨み付けた。

「俺は前世なんて嘘くさいもん絶対に信じねえって言ってんだよ」

(ラウル……)

 ズキリと胸が痛む。
 そして彼はくるりと私たちに背を向けた。

「俺もう帰って寝るわ」
「ラウル!」

 アンナが非難めいた声を上げる。けれど、彼は構わずにひらひらと手を振って部屋から出て行ってしまった。
< 39 / 260 >

この作品をシェア

pagetop