元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
アンナが硬い声で言う。
「レティを守らなきゃ」
「アンナ……」
「だってあの人、また迎えに行くって言ってたわ。また来るつもりよ。ねぇラウル、あなたレティの許婚でしょう? レティを」
「俺は信じねえ」
「え?」
低く呟いたラウルを見つめる。
彼はゆっくりと顔を上げ、私を睨み付けた。
「俺は前世なんて嘘くさいもん絶対に信じねえって言ってんだよ」
(ラウル……)
ズキリと胸が痛む。
そして彼はくるりと私たちに背を向けた。
「俺もう帰って寝るわ」
「ラウル!」
アンナが非難めいた声を上げる。けれど、彼は構わずにひらひらと手を振って部屋から出て行ってしまった。