元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
(それって、いつになるんだろう)
18歳の誕生日に先生に『おめでとう』と言ってもらいたいのに。
その日が刻々と迫っているのに。
それも……それすらも、叶わないのだろうか……。
「いっ……!」
急に胸の辺りがちりちりと痛んで驚く。
胸元を見下ろして、私は目を見開いた。
(薔薇の色が、濃くなってる……?)
まるで『真紅の薔薇』だ。
そう考えて、ぞくりと身体が震えた。
『聖女の証』
その薔薇が真紅に染まったとき、聖女は最大の奇跡を起こすとされていた。
だから聖女はその薔薇を己の血で真紅に染め上げて、命を――。
(あれ……?)
そういえば私、どうやって死んだんだっけ……?
国のために命を捧げるのだと、そう思ってセラスティアは短い生涯を生きた。
でもセラスティアが命を落とす、そのときの記憶がない。
そのときの夢を、見たことがない。
「う……っ」
記憶を手繰ろうとして、急に吐き気がこみ上げた。
慌てて口を覆って、アンナを起こさないよう気を付けて急いで洗面所へ向かう。