元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

「――貴女は、」

 そう、先生が何か言いかけたときだった。

「私からもお願いするよ。そこを退いてくれないかい? 騎士殿」
「!?」

 突然上がった声に先生が勢いよく背後を振り返る。
 そこにはフードを脱いだ彼が、ルシアン様が先ほどと同じ笑みを浮かべ立っていた。
 私を見て彼が嬉しそうに目を細める。

「迎えに来たよ、姫」
「不法侵入です。即刻この学園から立ち去ってください」

 先生が私の盾になるように前に出て警告する。
 その大きな背中を見て、ついまた彼の幻影を重ねてしまう。

 ルシアン様はふぅと呆れたようなため息を吐きながら肩を竦めた。

「君は、今世でも私たちの邪魔をするのかい? 全く、執念深いことだよ」
「執念深いのは、そちらの方ではないのですか?」
「……なんだと?」

 ルシアン様の声が一気に低くなって、私はそこで口を開いた。

「ルシアン様、私はあなたについて行く気はありません。ただあなたと話がしたくて来ました」

 彼の赤い瞳が私を見て、緊張を覚えながら続ける。

「私には、あの頃のような力は全くありません。なので、何の役にも立てません。だから」

 すると彼はくすりと可笑しそうに笑った。
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