元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
酷く混乱したような瞳がこちらに戻ってきて、しかしそれは私の胸元で留まり大きく見開かれた。
「それ……」
「っ!」
聖女の証が丸見えだったことに気付いて私は慌てて襟を直した、そのときだ。
「素晴らしい!!」
大きな歓声が上がり驚く。
ハっとして見ればユリウス先生の向こうで、ルシアン様が顔を輝かせていた。
「その力。あの頃と同じ、まさに聖女の奇跡の力だ!」
「アイツ……っ!」
ラウルが立ち上がって、私も震える足を叱咤してなんとか立ち上がる。
――そうだ。まだ安心は出来ない。
「あなたの目的は何なのですか?」
そう低く訊いたのは彼の前に立つユリウス先生だ。
「彼女に何をさせようというのです」
するとルシアン様はうっとりした笑みを浮かべたまま続けた。
「私の目的は今も昔も変わっていないよ。私はただ、愛おしい姫を私の手で守りたいだけだ」