元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

 愛おしい姫、という言葉とこちらに向けられた視線にぞくりと震えが走る。

「守る……?」

 ラウルが訝し気に呟いた。

「あぁ、そうさ。あの頃は叶わなかったからね……」

 すると彼は急に悔しげに顔を歪めた。

「だから、ずっとずーっと捜していたんだ。今度こそ、この手で姫を守るために」
「意味がわからねぇ。レティを誘拐しようとしているお前が、レティを何から守るってんだ」

 ラウルが苛ついたように訊くとルシアン様はスっと腕を上げ、“彼”を指差した。

「この男からさ」

(――え?)

 まっすぐに指差されたのはユリウス先生だった。

「……」
「はぁ? どういうことだよ!?」

 先生は何も言わない。
 代わりにラウルが怒鳴ると、ルシアン様は恨みのこもった恐ろしい形相で答えた。

「この男が、私の愛おしいセラスティア姫を殺したんだ!」
「!?」

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