元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。

「残念ながら僕に前世の記憶なんてものはありません」
「なんでだろうなぁ~~」
「ミス・クローチェ。そろそろ昼休憩は終了ですよ。僕も授業の準備がありますので退出してもらっても?」
「は~い」

 その声がほんの僅か低くなったことに気づいて、私は仕方なく一礼してから先生の部屋を出た。

(怒るとちょっとだけ声が低くなるところなんかも、クラウスまんまなんだけどなぁ)

 ――おはようございます姫様。本日もこのクラウス、貴女様を全力でお守りいたします。
 ――姫様。なかなかお戻りにならないのでお迎えに上がりました。
 ――姫様。そろそろお休みになられてはいかがですか? 明日の公務に響きますよ。

 私が王国にとって大切な『聖女』だったからだろう。
 クラウスはとにかくセラスティアに対し過保護だった。
 でもいつも優しい笑みを浮かべていた。その笑顔がセラスティアは大好きだった。
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