元聖女ですが、過保護だった騎士が今世(いま)では塩です。
――瞬間、目の前が真っ暗になった気がした。
「聖女は18歳で国のために命を捧げる……? 冗談じゃない! こっんな素晴らしい奇跡の力を持つ聖女が、そんな若さで意味もなく国のために死ななくてはならないなんて馬鹿げているにも程がある!!」
ルシアン様はまくし立てるように早口で続ける。
「だから私は姫を婚約者に欲しいと願い出たんだ。断れないとわかっていたからね。これで彼女を守れると思った。――なのに、なのに君が!」
もう一度彼がユリウス先生を強く指差すのを、ゆらゆらと揺れる視界の中で見ていた。
「本来姫を守る立場にあるはずの騎士の君が! 彼女を殺したんだ!!」